鍼灸マッサージ師がやっていいこと、ダメなこと。

JUGEMテーマ:整体

 

過去の記事では医師法違反などの判例を紹介してきて、どのような行為が医師法違反かを解説してきました。

では鍼灸マッサージ師はどの程度の行為まで認められるのでしょうか?

 

無免許業者に対して、医行為である旨を指摘した際、
"国家資格者がやっていることは医行為ではないのか?"
と反論を受けることもあります。

 

鍼灸マッサージや柔道整復などが限定された医行為なのか、医業類似行為なのかはよく議論になるところですが、前者であれば問診などが認められて当然ですし、医行為でないとしても免許制度は危険性を前提としている以上、安全な施術を行うための行為は認められてしかるべきです。

 

今回、ご紹介する判例は鍼灸マッサージ師の国家資格を持ち、米国のカイロプラクター資格(Doctor of Chiropractic)も持っていた者が、

 

"問診、触診、エックス線照射・撮影の指示及びエックス線写真の読影、血液検査・尿検査の指示、これらの結果による病名等の診断、瀉血治療、鼻の治療の診療行為をなし、もって医業をなしたものである。"

 

という事件です。

 

この判決文を読むと、外国政府による免許を持っていても認められない行為国家資格者には認められる行為がわかるかと思います。

地裁判決で確定しており、控訴・上告していれば判断は多少変わったかもしれませんが、概ね過去の判例に従っていると言えます。

改行、強調などは筆者によります。

 


出典 D-1Law.com 文書番号 28166751
東京地方裁判所
平成3年(特わ)第1602号
平成5年11月1日
本籍 東京都中野区(以下略)
住居 東京都八王子市(以下略)
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師

昭和一七年xx月xx日生
 右の者に対する医師法違反被告事件について、当裁判所は、検察官村山創史出席の上審理し、次のとおり判決する。

 

主文

 

被告人を懲役一年に処する。
この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する
訴訟費用は被告人の負担とする。

 

理由

 

(犯罪事実)

 被告人は、東京都知事からあん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師免許を受けて、東京都中央区(以下略)Aビル三階所在のB研究所を開設経営していたものであるが、Eらと共謀の上、いずれも医師でないのに、別表記載のとおり、昭和五七年一二月一日ころから、平成二年一二月一〇日ころまでの間、前後四一回にわたり、右B研究所において、Fほか二三名に対し、問診、触診、エックス線照射・撮影の指示及びエックス線写真の読影、血液検査・尿検査の指示、これらの結果による病名等の診断、瀉血治療、鼻の治療の診療行為をなし、もって医業をなしたものである。

 

(証拠の標目)
一 第一回、第九回、第一三回及び第一四回公判調書中の被告人の各供述部分
一 被告人の検察官(乙13)及び司法警察員(乙1ないし12)に対する各供述調書
一 第五回及び第六回公判調書中の証人Gの各供述部分
一 第八回及び第九回公判調書中の証人Hの各供述部分
一 Eの検察官(甲80)及び司法警察員(甲71ないし77、79)に対する各供述調書(ただし、甲72、73、77、79については不同意部分を除く)
一 Iの検察官(甲62)及び司法警察員(甲61)に対する各供述調書
一 Jの検察官(甲44)及び司法警察員(甲43)に対する各供述調書謄本
一 Kの検察官(甲46)及び司法警察員(甲45)に対する各供述調書謄本
一 Lの検察官(甲49)及び司法警察員(甲47、48)に対する各供述調書謄本
一 Mの検察官(甲51)及び司法警察員(甲50)に対する各供述調書謄本
一 N’ことNの検察官(甲15)及び司法警察員(甲13、14)に対する各供述調書(ただし、甲13、15については、不同意部分を除く)
一 Oの検察官(甲19)及び司法警察員(甲18)に対する各供述調書
一 Pの検察官に対する供述調書(甲21)
一 Qの検察官(甲25)及び司法警察員(甲24)に対する各供述調書(ただし、いずれについても不同意部分を除く)
一 Rの検察官(甲29)及び司法警察員(甲28)に対する各供述調書
一 Sの検察官(甲32)及び司法警察員(甲31)に対する各供述調書
一 F(甲1)、T(甲2)、aa(甲3)、ab(甲4)、ac(甲5、6)、ad(甲7)、ae(甲8)、af(甲9、10)、ag(甲11)、ah(甲12)、ai(甲16)、aj(甲17)、ak(甲22)、al(甲23)、am(甲26、27)、an(甲30)、ao(甲33、34)、ap(甲35)、aq(甲52、53)、ar(甲55)、as(甲55)、at(甲56、57)、ba(甲58)、bb(甲58、59)、bc(甲60)、bd(甲63、64)及びbe(甲92)の司法警察員に対する各供述調書(ただし、甲8、9、11、12、16、17、22、23、26、33、34、35、57については、不同意部分を除く)
一 司法警察員作成の証拠品複写報告書(甲82、84、85)、カルテ記載略号分析結果報告書(甲83)、写真撮影報告書(甲105)、医薬品「タイツコウ軟膏」についてと題する報告書(甲106)、押収品写真撮影報告書(甲107)及び捜索差押調書(甲157、163)
一 司法警察員作成の捜査関係事項照会書謄本九通(甲116、118、120、126、127、128、129、130、131)
一 厚生省健康政策局長作成の回答書三通(甲117、121、132)
一 東京都衛生局医療計画部長作成の回答書(甲119)
一 押収してあるレントゲンフィルム(甲159)、医薬品タイツコウ軟膏三箱(甲164)、ゴム風船四袋(甲165)、輪ゴム四本(甲166)、ゴム球一個(甲167)及び鉄製棒一本(甲168)

 

弁護人の主張に対する判断)

 

一 弁護人及び被告人は、公訴事実記載の各行為を被告人が行ったことは認めながら、これらの行為は医師法違反を構成するものではない旨主張するので、以下、判断を示す。

 

二 まず、医師法一七条にいうところの医業とは、医行為を業として行うものであり、医行為とは、人の疾病の治療を目的とし、医学の専門知識を基礎とする経験と技能とを用いて、診断、薬剤の処方、外科手術等を行うもので、医学上の知識と技能を有しない者がみだりにこれを行うときは生理上の危険があるものをいうと解されるので、以下、これを前提に被告人の行った各行為について検討する。

 

三 弁護人は、本件の問診、触診については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師(以下「あん摩師等」という。)が正当になし得る治療行為の前提として行われたものであって正当業務行為である旨、本件のエックス線照射・撮影の指示については、患者に診療所に行ってエックス線照射・撮影を受けるよう指示したものであって、照射・撮影が医師の指示のもとになされるときは医師の診察を受けるように指示したことに他ならず、本件で医師の指示がなかったとしても、これは診療所内での態様にすぎず、この場合でも指示行為自体は違法となるものではない旨、さらにその結果の読影については、あん摩師等として適切な治療行為を行うためこれを治療の参考にすることは当然許される旨、さらに病名診断については、あん摩師等が適切な治療行為を行うためには診断行為は不可欠なものであり、むしろ、これを患者に告知すべき契約上の義務があるというべきであり、しかも本件で病名診断とされているものはそのほとんどが所見に過ぎず、あん摩師等及びカイロプラクターとしての正当な業務の範囲内の行為である旨それぞれ主張する。

また、血液検査・尿検査の指示及びその結果に基づく診断についても同様に主張する。

 

 

 1(1) この点、まず、エックス線照射・撮影の指示について検討すると、エックス線の誤った使用は人体に対して障害を及ぼす高度な危険性があり、そのため診療放射線技師法はエックス線撮影の指示は医師のみがなしうる旨規定している。

そして、本件では、被告人は、エックス線の撮影部位等を記載した指示書(レントゲン撮影依頼書)を患者に持たせた上でbf診療所に赴かせ、右診療所においては、特に医師の診断等を経ることなく右指示書どおりにエックス線照射・撮影が行われており、被告人と右bf診療所との間においては、このように医師の指示等を経ずに被告人の指示書に基づいてエックス線照射・撮影を行う旨の合意ができていたことが認められる。
そうすると、エックス線照射・撮影の指示が検察官の釈明のとおり患者に対する指示であるとした場合でも、被告人は、bf診療所では医師の指示もなく、被告人らの指示書どおりにエックス線照射・撮影が行われることを認識して患者に指示していたことになり、被告人らによる指示は実質的にはエックス線照射・撮影の必要性、その部位や回数等を決定した上で指示したものと評価できる。

このような行為は、高度の危険性を伴うもので、医師のみしかなしえない行為であることは明らかであって、あん摩師等の正当な業務の範囲内のものとは認められないから、結局、被告人の行為は、医師以外の者が業としてすることが許されない医行為に該当するものと認められる。

 

  (2) 次に、エックス線撮影結果の読影については、それ自体高度の医学的専門知識を必要とするものである上、誤った読影は適切な治療がなし得なくなるという意味で生理上の危険を伴うものと認められるところ、あん摩師等はその資格上このような高度の医学的専門知識を要求されておらず、あん摩師等の治療行為の参考になるとしてもエックス線撮影結果の読影はその正当な業務の範囲を越えるものと認められるから、エックス線撮影結果の読影も医師以外の者が業としてすることが許されない医行為に該当するものと認められる。

 

  なお、被告人は、アメリカにおいてカイロプラクティックを学んだ際にエックス線撮影結果の読影も学んだ旨供述しており、弁護人も撮影結果についてカイロプラクティック独特の読影法が存在する旨述べているが、カイロプラクティック自体は、現在法律に何ら規定がなく、したがってカイロプラクティック治療を行う者は、医行為はもちろんのこと、医業類似行為についてもそれが人の健康に害を及ぼす虞がない場合以外はこれをなすことは許されないのであって、エックス線撮影結果の読影のような人の健康に重大な影響を及ぼす行為をなし得ないものと解される。

そしてこのことは、被告人が、エックス線撮影結果の読影能力を備えている場合であっても、一定の資格を有する者以外に医業をなすことを画一的に禁止することによって国民の生命・健康を保護しようとした医師法の趣旨からすると、許されないものと解される。

 

 

  (3) 次にエックス線写真に基づく病名診断についてであるが、これは人の健康状態等について判断するものであり、そのこと自体専門的知識を必要とするものである上、誤った病名診断は適切な治療の機会を失わせるという意味で生理上の危険を伴うことは否定できない。

弁護人は、本件において被告人は病名診断をしたのではなく所見を述べたにすぎないと主張するが、病名診断というか所見というかは用語の違いにすぎず、所見と称したとしても、人の健康状態について判断し、これを告知する点に変わりはなく、右のような危険があることは同様である。

もっともあん摩師等も一定の治療行為を行うことを法律上認められているのであるから、これを行う前提として必要かつ相当な範囲内で患者の状態を判断し告知することは許容されるものと解されるが、あん摩師等は資格上高度の医学的専門知識が要求されていないから、現行法上これには自ずと限界があるところ、被告人の行ったエックス線撮影結果の読影に基づいた診断は、前述のように読影には高度の医学的専門知識が必要とされ、読影自体許されないものであるから、その内容如何にかかわらずあん摩師等の業務上相当な範囲内にあるとは認められず、医師以外の者が業として行うことが許されない医行為に該当するものと解される。

 

 

 2 血液検査・尿検査の指示及びその結果に基づく病名診断についてであるが、血液検査結果や尿検査結果による診断もまた、一定の医学的専門知識を必要とするものであり、また前述のとおり診断自体は生理上の危険を伴うものであるところ、あん摩師等はその資格上このような知識を要求されるものではないので、その正当な業務の範囲内の行為とは認められず、前述のエックス線撮影結果の読影に基づく診断と同様に医師以外の者が業としてすることが許されない医行為に該当するものと解するのが相当である。したがって、その前提として行われた血液検査・尿検査の指示も、これらと一連の行為として医行為に該当するものと解される。

 

  なお、alに対して「コレステロールが高い、GTPが高い。」と述べた点についても、患者が持参した血液検査の結果をもとに、被告人においてこのような判断を下したものであり、Nに対する「腎臓が悪い。」との診断についても、関係証拠によると同人の申告をそのまま繰り返したものではなく、血液検査や尿検査の結果から判断したものと認められ、これらも医行為に該当するものと認められる。

 

 3 次に、問診、触診、これらによる診断について検討するに、問診、触診も一定の知識、経験を有する者が行わなければ、効果的な問診、触診を行うことができず、その結果適切な治療がなされないことになるという意味で生理上の危険を伴うものといえる。

ただ、あん摩師等が治療行為を行うにも問診、触診は不可欠なもので、あん摩師等の正当な治療行為のため問診、触診を行うことは許容されているものと解される。

しかし、本件起訴にかかる問診、触診は、あん摩師等の正当な治療行為のためという点を越えて、エックス線照射・撮影の必要性、部位、回数等を決定するため、あるいは血液検査や尿検査の要否を決定するためにも行われていたものと評価することができ、正当な業務の範囲内のものとは認められない。

したがって、本件においては、問診、触診も医行為と解するのが相当である

そして、acに対する「動脈硬化症」、Qに対する「足から熱が出ているから腎臓が悪くなっている」との各診断は、エックス線写真の読影に基づく診断でもなく、血液検査、尿検査結果に基づく診断でもないが、具体的病名を挙げるなどして必要かつ相当な範囲を越えた診断をしている上、ahに対する「扁桃腺が赤く腫れている。」との診断、Nに対する「腎臓の他に血圧も高い」との診断、ajに対する「めまいは、蓄膿症が原因。」との診断については、いずれも瀉血治療や鼻の治療の要否の判断と不可分一体のものであり、右治療の前提としてなされたといい得るところ、後述のとおり瀉血や鼻の治療は医行為であるから、正当な業務の範囲内の行為とも認められず、これらの診断も治療行為と一連のものとして、医行為に該当するものと認めるのが相当である。

 

なお、患者afに対する「糖尿病による神経性筋肉炎」との診断については、afが糖尿病と腰等の痛みを被告人に対して訴えたことは認められるが、右「糖尿病による神経性筋肉炎」との診断は被告人自身によるものであり、acに対する「動脈硬化症」との診断についても、ac自身が自己の病名を知っていたことは認められるが、被告人や右acの供述調書等によると、被告人が右病名を診断したものと認めるのが相当であり、右はいずれも医行為たるを免れない。

 

四 瀉血について

 

 1 弁護人は、本件でいう瀉血とは東洋医学でいう刺絡のことであり、危険性はなく、はり師の正当な業務範囲に属するものである旨主張する。

 

 2 本件被告人の行為を瀉血というか刺絡というかは別として、その内容は、喉頭部や後頸部にはりを刺して少量の血液を抜き取るという療法であり、弁護人は、本件瀉血による危険性は医学的、科学的に明らかにされていない旨主張するが、前述のとおり一般に危険とされる行為を医師のみに独占させて国民の生命、健康の安全を保護しようとした医師法の趣旨からすると、医行為に伴う生理上の危険も一般的、抽象的なもので足りるものと解されるところ、一般にこのように血液を抜き取るという行為自体に生理上の危険を伴うことは明らかというべきである。

 

  なるほど、はり師は、法律上はり治療を行うことを認められており、歴史的には瀉血(刺絡)は、はり師の療法として行われてきたことが認められる。

 

しかしながら、一般的に危険を伴う行為を医師のみに独占させた法の趣旨からすると、現行法は、はり師に、通常のはり治療以外に、本件のような血液を抜き取るような療法まで認めたものとは解されず、本件瀉血は、はり師の正当な業務の範囲内の行為とは認められない。

 

  したがって、本件瀉血は、医師以外の者が業としてすることが許されない医行為であるものと解するのが相当である。

 

五 鼻の治療について

 

  弁護人は、本件鼻の治療は、カイロプラクティック療法として被告人がアメリカで修得したもので、人体への危険はなく、適法な行為である旨、また、本件で使用した薬品(タイツ膏)は単なる潤滑剤として用いられたものである旨主張する。

 

  この点、本件薬品が医薬品ではなく潤滑剤として用いられたことは関係証拠上認められるが、本件鼻の治療が人の生理上の危険を伴うことは関係証拠上明らかであり、前述のとおり、カイロプラクティック治療を行う者としても、このような危険を伴う行為を行うことは許されないのであるから、本件鼻の治療は、正当な業務行為とは認められず、医行為に該当するものと解される。

 

(法令の適用)

罰条 包括して刑法六〇条、医師法三一条一項一号、一七条
刑種の選択 懲役刑を選択
執行猶予 刑法二五条一項
訴訟費用の負担 刑事訴訟法一八一条一項本文

 

(量刑の事情)

 本件は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格を持ち、また、アメリカでカイロプラクティック療法を勉強した被告人が、B研究所と称する治療院を開設し、右治療院において副院長その他従業員らと共謀の上、判示のとおりの医業をなしたという医師法違反の事案である。

 

 本件違反行為は、昭和五七年一二月から平成二年一二月までの長期に及び、多数の患者に対して多数回の違反行為を組織的に繰り返したものであり、具体的な違反行為についても、エックス線の照射・撮影の指示や結果の読影など危険性が高く、犯情は悪質といわざるを得ない。また、被告人の違反行為によって患者の身体に対して現実的な危険が生じた事例も窺われる。以上の事情に照らすと、被告人の刑事責任を軽視することはできない。

 

 他方、被告人は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格を有する他、アメリカでカイロプラクティックの勉強をしてアメリカのD・Cの資格も有しており、被告人自身は、これらの知識を利用した治療行為を行おうとしていたこと、被告人自身治療家として一定の社会的評価も得ていたこと、本件各行為についてその適法性を主張しながらも、もし違法であればその点を反省し、今後は行わない旨述べていることなど被告人のために酌むべき事情も存在する。

 

 そこで、これらの諸事情を総合考慮し、被告人を懲役一年に処した上で、その刑の執行を二年間猶予することを相当と認めて主文のとおりの量刑をした次第である。
刑事第1部
 (裁判長裁判官 木村烈 裁判官 川本清巌 裁判官 柴山智)
別表


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